
9月5日、ガソリン税暫定税率廃止を巡る与野党協議が5回目でも決裂した。
しかし、この問題の本質は政争の具となった「臨時措置」が35年も続く制度の矛盾にある。
元社会科教師として40年間、税制問題を見続けてきた筆者が、大手メディアでは語られない構造的問題と地方への影響を独自分析する。
【なぜ「臨時」税制が35年も続くのか―制度の歴史的欺瞞】
暫定税率という名称自体が国民を欺いている。
1990年の湾岸戦争時に「臨時」として導入されたこの制度が、なぜ2025年の今も存続しているのか。
筆者が教壇に立っていた1990年代、生徒たちに「暫定とは一時的という意味だ」と教えながら、心の中では「これは永続化するだろう」と予感していた。
案の定、35年経った今も「暫定」のまま。
これは制度設計の問題ではなく、政治の怠慢と言わざるを得ない。
なおじ分析:政治家の「痛みの先送り」体質
与野党とも選挙を意識し、有権者に痛みを伴う抜本改革を避け続けてきた結果がこの状況だ。
今回の協議でも代替財源の議論が進まないのは、この体質の現れに他ならない。
【地方の悲鳴―茨城県の実情から見える格差拡大】
筆者の住む茨城県は、車社会の典型例である。
公共交通機関が限られる地方では、ガソリンは生活必需品。
都市部の「贅沢品」という感覚とは全く異なる。
大洗町から水戸市まで通勤する知人は、月のガソリン代が2万円を超える。
暫定税率廃止で1リットル25円下がれば、月3000円の節約。
年間なら3万6000円だ。これは地方の子育て世帯には大きな金額である。
しかし、ここに落とし穴がある。
【与野党の「隠された対立軸」―本音と建前の乖離】
大手メディアは「廃止時期」や「代替財源」での対立と報じているが、本質はもっと深い。
野党の本音:選挙対策として「減税」をアピールしたいが、財源確保の責任は負いたくない
与党の本音:地方交付税減額による自治体の反発を恐れるが、「増税反対」の有権者感情も無視できない
両者とも本当の争点を隠している。
それは「誰が痛みを負うか」という根本問題だ。
【47都道府県への影響格差―データで見る地域間対立の構図】
47newsのデータによると、暫定税率廃止による税収減が最も大きいのは:
- 愛知県(約280億円減)
- 大阪府(約240億円減)
- 神奈川県(約220億円減)
一方、影響が相対的に小さいのは:
44. 鳥取県(約8億円減)
45. 島根県(約9億円減)
46. 高知県(約10億円減)
ここに重大な問題が潜んでいる。
車の保有台数が多い都市部ほど減税の恩恵が大きく、公共交通が発達している都市部ほど税収減の影響も大きい。
つまり「都市部が得をして、地方が割を食う」構造になりかねない。
ちなみに、なおじが住む茨城県についても調べてみたのですが、残念ながら信頼できる情報が得られませんでした。
ただし、茨城県は公共交通が十分に発達していないエリアが多く、車社会であるため、ガソリン税や軽油引取税など道路財源への依存度が高い県の一つです。
また、茨城県内の道路整備や橋梁補修、雪害対策など多くのインフラ事業が地方揮発油税などの財源で支えられているため、暫定税率廃止は自治体財政に大きな影響を及ぼす可能性が高い県の一つでしょう。
【元教師が見た教育現場への波及効果】
教育関係者として看過できないのは、地方交付税削減による教育予算への影響。
筆者が現役時代、バブル崩壊後の財政難で:
- 教材費の削減
- 施設修繕の先送り
- 非常勤講師の削減
といった事態を経験した。
今回の暫定税率廃止で代替財源が確保されなければ、同様の事態が全国の学校で起こりうる。
子どもたちの未来を犠牲にしてまで、大人の政争を優先させるべきではない。
【筆者提案:「段階的廃止+目的税化」の現実的解決策】
40年間の教育現場と社会変化を見続けた経験から、以下を提案する:
第1段階(2026年4月〜):暫定税率を半額(12.5円)に削減
第2段階(2027年4月〜):完全廃止、ただし「地方創生税」として目的税化
第3段階(2028年4月〜):税収の使途を「脱炭素・公共交通整備」に限定
これなら段階的に国民負担を軽減しつつ、地方財政も守れるのでは。
何より「臨時措置の永続化」という制度の欺瞞を終わらせることができる。
【読者への問いかけ―あなたの選択は?】
この問題は遠い政治の話ではない。
ガソリン税は安いに越したことはない。だが、問題はそう単純ではない。
あなたの住む地域の道路整備、学校予算、高齢者福祉に直結している。
コメント募集:
- あなたの地域ではガソリン税廃止の影響をどう感じますか?
- 代替財源として何が適切だと思いますか?
- 政治家の「痛みの先送り」体質をどう変えるべきでしょうか?
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