石破茂首相の電撃的な退陣表明により、自民党総裁選は小泉進次郎農相(44)と高市早苗前経済安全保障相(63)を軸とした戦いへと展開するようだ。
若手人気と保守層支持を背負う2人の対決構図が浮上し、総裁選は世代交代とイデオロギーのせめぎ合いという構図が鮮明になってきた。
茂木敏充前幹事長の立候補表明により、さらに複雑な様相を呈している中、党内では「フルスペック方式」による実施が濃厚視されており、10月上旬の投開票に向けて党内の動きが本格化している。

石破政権短命の背景と「ポスト石破」への展開
石破政権の苦境と退陣の経緯
石破茂首相は2024年10月に第102代内閣総理大臣に就任したが、衆議院総選挙での大敗により少数与党に転落し、さらに2025年7月の参議院選挙でも敗北を喫した。
この3連敗により党内の不満が頂点に達し、総裁選前倒しを求める声が急激に高まった。
9月6日夜、菅義偉副総裁と小泉進次郎農相が石破首相と会談し、自発的な退陣を促したことが決定打となった。
石破首相は7日午後6時の緊急記者会見で「自由民主党総裁の職を辞する」と表明し、約1年という短命政権に終止符を打った。
現職閣僚の出馬容認が示す党内力学
石破首相は8日午前の記者会見で、現職閣僚による総裁選出馬について「それは当然認められる。それぞれの(閣僚の)担務に万全の責任が果たせる態勢を作った上での立候補であれば、何らそれを妨げる理由はない」と明言した。
この発言により、小泉農相や林芳正官房長官といった現職閣僚の立候補への道筋が明確になった。
「ポスト石破」有力候補の分析
小泉進次郎農相:世代交代の象徴

小泉進次郎農相(44)は、前回2024年9月の総裁選で3位入賞を果たし、今回の総裁選でも最有力候補の一人として注目されている。
政治的背景と実績
- 2024年10月から石破内閣で農林水産大臣を務める
- 2025年6月には農政白書にデジタル農業戦略を明記するなど、政策実行力を発揮
- 若手議員のリーダー的存在として党内で一定の影響力を維持
支持基盤と戦略
小泉氏は石破首相に自発的退陣を促した経緯からも、石破路線の継続を期待する勢力からの支持を得る可能性が高い。
特に農政改革やデジタル化推進といった政策分野で独自色を打ち出し、若年層の支持獲得を目指すとみられる。
高市早苗前経済安全保障相:保守層の期待

高市早苗前経済安全保障相(63)は、前回総裁選で決選投票まで進んだ実力者として、今回も有力候補に挙げられている。
政治的立場と政策方針
- 保守的な政策路線で一貫した立場を維持
- 安全保障政策や経済政策で独自の見解を展開
- 女性初の首相への期待も背景に一定の支持層を確保
党内ポジション
高市氏は9月2日夜に支持する若手議員約10人と会食し、今後の対応について議論するなど、すでに足場固めを開始している。
保守系議員からの支持を基盤としつつ、より幅広い支持層の拡大を目指すとみられる。
茂木敏充前幹事長:実務型候補の浮上
9月8日午前、茂木敏充前幹事長(68)が「総裁選に出馬する思いを固めた。これまで党や政府で経験した全てを国に捧げたい」と表明し、石破首相の退陣表明後初の立候補意向を示した。
立候補に必要な推薦人20人の確保についてもめどが立っているとされ、豊富な政治経験を武器に戦いに臨む構えを見せている。
派閥力学と推薦人確保の攻防
推薦人20人システムの意味
自民党総裁選では、立候補に党所属国会議員20人の推薦が必要となる。
この制度により、一定の党内支持基盤を持たない候補者の乱立を防ぐ効果がある一方、派閥や議員グループの結束力が試される仕組みともなっている。
各候補の推薦人確保状況
前回総裁選において、小泉氏は20人の推薦人を確保して立候補を果たした。
今回についても、小泉グループを中心とした支持議員の結束により、推薦人確保は比較的順調に進むとみられる。
高市氏についても、保守系議員を中心とした支持基盤があり、推薦人確保に大きな支障はないと予想される。
茂木氏も「推薦人確保のめどが立っている」と表明しており、実際の立候補に向けた準備は整っているようだ。
「フルスペック方式」実施の可能性と影響
党員投票の重要性
自民党は9日にも、全国一斉で党員投票を行う「フルスペック」方式で実施するかどうかを決定する見通しだ。
フルスペック方式が採用されれば、国会議員票に加えて党員・党友票も同数配分され、より民主的なプロセスでの総裁選出となる。
【次ページでは、毎日新聞の世論調査ではどのような結果が出ているのかを示します。】