【2025年11月13日追記】高市首相の存立危機事態発言、自衛隊トップは沈黙・中国は撤回要求継続

こんにちは、なおじです。
統合幕僚長が「何も言えない」——雄弁な沈黙。
高市首相の存立危機事態発言から1週間。
事態は収束どころか、思わぬ方向に広がっています。
11月13日、防衛省のトップが記者会見で見せた「沈黙」が、逆にこの問題の重さを浮き彫りにしました。
一体何が起きているのか——最新情報を整理してお伝えします。
自衛隊トップは文民統制の「壁」を守った
Q:統合幕僚長は高市首相の発言をどう評価したのですか?
A:「首相の発言について申し上げる立場にない」と答え、評価を避けました。
内倉浩昭統合幕僚長は13日午後の定例会見で、記者からの質問にこう答えました。
批判でも支持でもない——これは**文民統制(シビリアンコントロール)**という民主主義の大原則そのものなんです。
※高市首相の存立危機事態発言の法的背景については→高市早苗首相の存立危機事態発言が波紋│メディアが報じない法的真実を解説をご覧ください。
教壇に立っていた頃、生徒たちにこう教えていました。
「軍隊が政治に口を出し始めたら、民主主義は終わる」と。
統幕長は「厳しさを増す安保環境の中で」とも述べており、安全保障上の懸念は共有しています。
でも、政治判断には踏み込まない——この一線を守ったわけですね。
実は2025年3月の防衛省組織改編で、統幕長の役割は「政治の補佐役」と明確化されています。
部隊指揮は新設の統合作戦司令官が担当し、統幕長は政治判断にコメントしない体制になったのです。
前例がある——麻生・安倍両氏も同じことを言っていた
ここで驚く事実をお伝えしましょう。
高市首相の発言、実は初めてではないんです。
2021年7月5日、麻生太郎副総理(当時)が都内の講演でこう述べていました。
「台湾で大きな問題が起きると、存立危機事態に関係してきても全くおかしくない。日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」
さらに同じ年の12月1日、安倍晋三元首相も台湾のシンクタンクで強調しました。
「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」
じゃあ何が違うのか——そそれは発言の場です。
麻生氏は副総理として、安倍氏は元総理として、いずれも講演会やシンポジウムで述べました。
一方、高市首相は現職総理として国会答弁で、具体的なシナリオまで提示したんです。
国会答弁は政府の公式見解として議事録に残ります。
講演での発言とは、法的・外交的な重みが全く違うわけですね。
「台湾が中国に海上封鎖され、米軍が防衛に出動し、中国が米軍を攻撃すれば、存立危機事態に該当する可能性がある」
この国会という公式の場での明言を問題視している、という構図です。
高市首相の発言(YouTube動画・自民党公式サイトより)
「例えば、海上封鎖を解くために、米軍が来援する。それを防ぐために、何らかのほかの武力行使が行われる。こういった事態も想定される」
「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」
高市首相は確かに**具体的なシナリオ(海上封鎖→米軍来援→さらなる武力行使)**を提示していました。
この点をとらえて東京新聞や日経新聞は「異例の踏み込んだ答弁」と報じています。
さて、この答弁を皆さんはどうとらえますか。
日本の立場としては、当然の見解?
中国は「直ちに撤回せよ」と圧力強化
一方、中国側の姿勢は一貫して強硬です。
11月12日、中国外務省の報道官は「悪質な発言の撤回を要求する」と表明。
13日にはさらに踏み込んで「直ちに撤回しなければならない」と圧力を強めています。
でも、高市首相は撤回しませんでした。
10日の国会で「撤回するつもりはない」と明言しています。
「従来の政府の立場を変えるものではない」としながらも、「最悪のケースを想定した」答弁だと説明しました。
薛剣総領事の暴言には与野党が激怒
もう一つ、見逃せない動きがあります。
中国の薛剣駐大阪総領事が11月8日深夜に投稿した「汚い首は斬ってやる」という暴言です。
(詳細は→薛剣総領事『首を斬る』発言は外交問題か|戦狼外交の実態を元教師が解説)。
評論家の石平氏は「一線を越えた。国外追放せよ」と強く批判。
経済学者の高橋洋一氏も12日のコラムで、従来の抗議方法に固執せず「相互主義での対応」を求めました。
興味深いのは、野党各党もこの総領事の暴言には反発している点です。
- 立憲民主党・安住淳幹事長:「日中関係に何らプラスにならない」
- 国民民主党・玉木雄一郎代表:「度を超している」
自民党の小林鷹之政調会長は「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましくない人物として国外退去を求めること)を含めた対応を政府に求める」と、事態の深刻さを強調しています。
米国は静観——日中の対立には深入りせず
対照的に、米国務省は12日の声明以降、追加コメントを控えています。
「台湾海峡の平和と安定に関与する」という原則だけ示して、日中の対立には深入りしない。
これがアメリカの戦略なんでしょうね。
まとめ:日本の安全保障政策は岐路に立つ
Q:結局、何が問題なんですか?
A:「あいまい戦略」が終わり、日本が明確な立場表明を迫られている点です。
中国の猛反発、自衛隊の文民統制順守、米国の静観——。
そして麻生・安倍両氏の過去発言が示すように、台湾有事は日本にとって現実的なリスクです。
高市首相は「今後は特定ケースへの明言を慎む」と軌道修正しつつも、「撤回はしない」姿勢を貫いています。
一線を越えた発言が、日本の安全保障政策にどんな影響を与えるのか。
私たちは歴史の転換点を、まさに目撃しているのかもしれません。