
「一人で抱え込まないで」——そんな思いで活動を続ける京都犯罪被害者支援センターに、昨年度は過去最多となる2116件もの相談が寄せられました。
特に注目すべきは性犯罪関連の相談が953件と全体の半数近くを占め、わずか2年で倍増している事実です。
この急激な変化の背景には何があるのでしょうか?
京都犯罪被害者支援センターの基本情報と役割
27年間、被害者に寄り添い続ける支援の拠点
京都市上京区にあるこのセンターは、1998年の発足以来、犯罪や事故の被害者・遺族が直面する様々な困難と向き合ってきました。
主な支援内容:
- 24時間対応の電話相談
- 裁判の傍聴付き添い
- 給付金申請手続きのサポート
- 精神科医やカウンセラーとの橋渡し
2011年に公益社団法人となってからは、より専門的な研修を受けた職員とボランティアが連携。
「被害者が一人ではない」ことを伝え続けています。
性犯罪相談が急増している深刻な現実
2024年度の相談件数内訳と傾向分析
2024年度の相談内訳:
- 性犯罪関連:953件(約45%)
- その他の犯罪被害:1163件
- 合計:2116件(過去最多)
センター専務理事の中道教顕さんは、この急増について次のように分析しています。
「性加害を受けた方々が、以前よりも勇気を出して声を上げられる環境に変わったのではないでしょうか。長い間、心の奥に閉じ込めていた被害が、ようやく表面化してきているのだと思います」
なぜ今、被害者が声を上げやすくなったのか
この変化には、社会全体の意識変化が大きく関わっています。
被害者が「恥ずかしいこと」として隠す必要がなく、「支援を受ける権利がある」という認識が広まってきたのです。
社会を変えた2つの大きな転換点
旧ジャニーズ事務所性加害問題が与えた社会的インパクト
2023年に明るみに出た一連の問題は、日本社会に大きな衝撃を与えました。
有名芸能事務所という「権力」による性加害が公になったことで、「声を上げることの重要性」が広く認識されるように。
これまで「泣き寝入り」せざるを得なかった被害者にとって、「声を上げても良い」という社会的な後押しになったのです。
刑法改正による法的環境の整備
2023年6月施行の刑法改正内容:
- 「強制性交罪」→「不同意性交罪」
- 「強制わいせつ罪」→「不同意わいせつ罪」
この改正により、同意のない性行為への処罰がより明確になりました。
被害者にとって「自分の経験が犯罪だった」と認識しやすくなったのです。
支援現場の生の声と取り組み強化
専門研修による対応力向上への取り組み
中道さんはこうも語ります。
「今年度は職員研修のテーマを性犯罪支援に特化しました。警察官の方や精神科医の先生をお招きして、被害者の心に寄り添う技術を学んでいます。一言一言が被害者の方の心を左右することもあるので、責任を感じながら取り組んでいます」
相談現場で直面する被害者の心境
実際の相談現場では、被害者が「自分が悪かったのでは」と自責の念にかられるケースも多いそう。
そんな時、相談員は「あなたは何も悪くない」と繰り返し伝え、安心できる環境づくりに努めています。
まだ見えない被害者たちへの課題
「一人で苦しまないで」という支援者からの願い
しかし、相談件数が増加している一方で、中道さんには大きな懸念があります。
「警察に被害を打ち明けられない方、私たちセンターの存在を知らないまま一人で苦しんでいる方が、まだまだ多いのではないかと感じています」
性犯罪被害の「氷山の一角」問題
実際、性犯罪の被害届出率は他の犯罪と比べて極めて低いとされており、「氷山の一角」という表現がよく使われます。
今後の重要課題:
- より幅広い広報・啓発活動の展開
- アクセスしやすい相談環境の整備
- 24時間対応体制の充実化
京都アニメーション事件から学んだ支援ノウハウ
大規模事件での支援経験を活かした体制強化
2019年に発生した京都アニメーション放火殺人事件では、このセンターが遺族支援の最前線に立ちました。
当時の対応実績:
- 事件発生年度(2019年):1659件
- 裁判開始年度(2023年):1996件
全国連携による広域支援体制の構築
全国の支援センターと連携し、府外在住の遺族にも支援を提供。
裁判の傍聴付き添いでは、遺族の心理的負担を軽減するため、事前に専門家による講義も実施しました。
中道さんは振り返ります。
「これほど大規模な事件は前例がなく、手探りでの支援でした。でも、この経験が現在の性犯罪被害者支援にも活かされています」
被害者への相談窓口と支援内容
京都犯罪被害者支援センターの連絡先
もし今、一人で苦しんでいる方がいらっしゃるなら、まずは相談してみてください。
小さな一歩が、大きな変化の始まりになるかもしれません。
📞 京都犯罪被害者支援センター
- 電話番号:0120-60-7830
- 受付時間:平日12:00〜17:00
- 相談無料・秘密厳守
相談時に受けられる具体的な支援内容
- 心理的サポートと傾聴
- 法的手続きの情報提供
- 専門機関への紹介・橋渡し
- 裁判付き添いサービス
- 経済的支援制度の案内
まとめ:支援の輪を広げるために
今回の報告から見えた重要なポイント
今回の報告で明らかになったのは、犯罪被害者支援の需要が急激に高まっているという現実です。
重要なポイント:
✅ 京都の支援センターに過去最多2116件の相談
✅ 性犯罪関連が953件で全体の45%を占める
✅ 社会的関心の高まりと法改正が背景
✅ まだ声を上げられずにいる被害者が多数存在
✅ 支援体制のさらなる強化が急務
社会全体で取り組むべき今後の課題
一人で抱え込んでいる方がいれば、ぜひ勇気を出して相談してほしい。
そして私たち社会全体も、被害者が声を上げやすい環境づくりに取り組んでいく必要があるでしょう。
この記事は、読売新聞(2025年8月26日付)をはじめとする公的報道資料をもとに、事実確認を行った上で執筆しています。推測や分析部分は明確に区別し、未確認情報については適切に注釈を付けています。最新の動向については、公式情報源での確認をお勧めします。
