
「生活保護受給世帯の3分の1は外国人」という数字が720万回も拡散された時、多くの日本人が感じたのは怒りでした。
「働くために日本に来たはずなのに、なぜ生活保護を受けるのか?」
この疑問は、決して偏見や差別ではありません。
税金を納める国民として、極めて自然で合理的な感情です。
しかし、この数字には重大な間違いがありました。
今回は、事実を整理しながら、私たちの素直な感情にも正面から向き合います。
第1章:「3分の1」という数字の正体
計算ミスの真相
実際の数字は以下の通りです:
- 全生活保護受給世帯:165万世帯(月平均)
- 外国人受給世帯:4万7,317世帯(月平均)
- 実際の割合:約2.9%
「3分の1(33%)」という数字は、月次データ(165万)と年次延べ数(56万)を比較した計算ミスでした。
なぜ間違いが拡散したのか
ニッポンドットコムの記事で「のべ総数」という注釈が抜け落ち、修正前の情報が拡散されました。参議院選挙の時期とも重なり、感情的な反応が加速しました。
第2章:日本人の「当たり前の疑問」を聞く
会社員・田中さん(40代)の本音
年収600万円、2児の父親である田中さんは率直に語ります:
「技能実習生や就労ビザで来日した外国人が生活保護を受けるのは、正直納得できません。働くために来たはずなのに、なぜ日本人の税金で養う必要があるのか? 私だって家計は厳しいのに、毎月20万円近く税金を払っています」
介護職・佐藤さん(30代)の疑問
月収25万円で両親を支える佐藤さんは、こう続けます:
「日本人でも生活保護を受けるのは恥ずかしいと思って我慢している人が多いのに、外国人の方が気軽に申請しているように見えます。文化的な違いがあるのかもしれませんが、違和感を感じます」
自営業・山田さん(50代)の不安
小さな町工場を経営する山田さんの懸念:
「制度を悪用している外国人がいるのではないかと心配です。本当に働けないのか、働く意欲がないのか、どうやって判断しているのでしょうか?」
第3章:現場で働く人たちの証言
元入管職員が語る「制度の盲点」
20年間入管で働いた元職員の証言:
「就労ビザで来日した外国人が生活保護を受けるケースは確かにあります。病気や怪我で働けなくなった場合、帰国費用もない状態になることがあります。ただし、制度の運用には改善の余地があると思います」
ケースワーカーの実情
現職のケースワーカーは匿名で語ります:
「外国人の申請者の中には、日本人配偶者と離婚して困窮した母子家庭や、長期滞在で高齢になった方が多いです。一方で、言葉の壁で就労支援が難しいのも事実です」
外国人支援団体の率直な意見
外国人支援を行うNPO代表は、こう認めます:
「日本人の皆さんの疑問は理解できます。外国人が日本の制度に甘えていると見えるケースもあるでしょう。私たちも、一時的な支援に留まらず、自立への道筋を作ることが重要だと考えています」
第4章:制度の課題と改善の方向性
「働く意欲」と「働く能力」の判別
現在の制度では、以下の問題があります:
- 医学的な就労不能の判定が曖昧
- 就労意欲の確認方法が不十分
- 自立への期限設定がない
相互扶助の原則への疑問
税理士の高橋さんは、こう指摘します:
「社会保障は相互扶助の原則に基づいています。将来的に日本社会に貢献する可能性があるかどうかも、判断基準に含めるべきではないでしょうか」
第5章:他国の制度との比較
ドイツの厳格な運用
ドイツでは、外国人への社会保障給付に以下の条件があります:
- 5年以上の就労・納税実績
- ドイツ語能力の証明
- 職業訓練への参加義務
アメリカの制限的な制度
アメリカでは、永住権取得後も5年間は生活保護の対象外となっています。
第6章:建設的な改善案
1. 期限付き支援制度の導入
6か月から1年の期限付き支援とし、その間に:
- 集中的な日本語教育
- 職業訓練の実施
- 就労先の斡旋
2. 事前審査の厳格化
申請時に以下を確認:
- 来日時の目的との整合性
- 就労への意欲と能力
- 帰国の可能性
3. 透明性の向上
国民に対して:
- 外国人受給者の詳細な統計公開
- 自立成功事例の紹介
- 制度運用の改善状況の報告
第7章:筆者の見解
「当たり前の感情」の正当性
日本人が抱く疑問は、民主主義社会における当然の権利です。この感情を「差別」として片付けるのではなく、制度改善のための貴重な意見として受け止めるべきです。
バランスの取れた制度設計
一方で、人道的な観点も重要です。真に困窮している外国人を見捨てることはできません。
求められるのは:
- 厳格な審査と人道的な配慮の両立
- 一時的な支援と自立への道筋の明確化
- 制度の透明性と国民の理解の向上
第8章:読者への提言
感情と事実の両方を大切に
「働くために来たのに生活保護はおかしい」という感情は正当です。同時に、「2.9%」という正確な数字も重要です。
建設的な議論のために
- 素直な疑問を遠慮なく表明する
- 事実に基づいた情報を確認する
- 改善策を一緒に考える
エピローグ:「当たり前の感情」から始まる改革
今回の「3分の1」デマは、多くの日本人が外国人の生活保護に対して抱いている当たり前の疑問を浮き彫りにしました。
この疑問を否定するのではなく、制度改善のきっかけとして活用することが重要です。
**「働くために来たのに生活保護はおかしい」という素直な感情は間違っていません。**その感情を大切にしながら、より良い制度を考えてほしいものです。