こんにちは、なおじです。
「調理実習で中学生が病院搬送」というニュースに驚いた方も多いでしょう。
2026年1月23日、福岡県北九州市の本城中学校で、ピザ作りの調理実習中に6人の生徒が塩分過多により病院に搬送されました。
原因は「塩の入れすぎ」。
元教師として35年間、調理実習の安全指導に携わってきた経験から、この事故の詳細と再発防止策を解説します。

この記事でわかること
・2026年1月23日、北九州市の中学校で調理実習中に6人が塩分過多で搬送
・原因は「塩3つまみ」を理解できず規定量以上の食塩を投入したこと
・ピザ生地の適切な塩の量(小麦粉300gに対し塩6g)と塩分過多の危険性
・元教師が見る調理実習の安全管理体制とリレー方式の問題点
・学校での安全教育と保護者ができるサポート
中学生6人が調理実習で塩分過多により搬送

この事故は多くの保護者に不安を与えました。
2026年1月23日、北九州市で発生した事故の概要
2026年1月23日午後2時頃、福岡県北九州市八幡西区の本城中学校で、家庭科の調理実習中に8人の中学3年生が体調不良を訴えました。
授業では「ピザ作り」を実施していました。
生徒たちはピザを食べた後、「しょっぱい」「気持ちが悪い」と訴えたのです。
生徒8人が体調不良、うち6人が病院搬送
体調不良を訴えた8人のうち、6人が救急搬送されました。
搬送先の病院で診察を受けたところ、6人とも異常なしと診断。
軽症でした。
1人の生徒の尿からは高濃度の塩分が検出。
これが塩分過多による体調不良であることを裏付ける結果となったのです。
「しょっぱい」「気持ち悪い」の訴え
生徒たちは食べた直後から異変を感じていたと見られます。
「しょっぱい」と感じながらも食べ続けてしまった可能性があるわけです。
その結果、塩分を過剰摂取してしまったと考えられます。
教育現場では、生徒が「おかしい」と感じた時にすぐに報告できる雰囲気作りが重要です。
【表1:事故の概要】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日 | 2026年1月23日 午後2時頃 |
| 発生場所 | 福岡県北九州市八幡西区 本城中学校 |
| 対象学年 | 中学3年生 |
| 体調不良人数 | 8人 |
| 搬送人数 | 6人 |
| 症状 | 「気持ちが悪い」「吐き気がする」「しょっぱい」 |
| 搬送後の状態 | 6人とも異常なし(軽症) |
| 原因 | 規定量以上の食塩が入ったピザ生地 |
| 公式発表日 | 2026年2月10日(北九州市教育委員会) |
事故の原因は「規定量以上の食塩」

事故の原因が明らかになりました。
北九州市教育委員会が2月10日に公式発表
事故発生から約2週間後の2026年2月10日、北九州市教育委員会が原因を公式発表しました。
**「規定量以上の食塩が入ったピザ生地」**が原因でした。
医師の見解では、一時的にナトリウム過多により体調不良を引き起こした可能性が高いとされています。
リレー方式で前のクラスが生地を作成
この調理実習では「リレー方式」を採用していました。
リレー方式とは、1コマ前のクラスがピザ生地を作成し、次のクラスがトッピングして焼く方式です。
つまり、生地を作った生徒と食べた生徒が別。
これが問題を複雑にしました。
生地を作った生徒は味見をせず、食べた生徒は生地の作り方を知りません。
結果として、誰も塩の量を確認できなかったと考えられます。
「塩3つまみ」を理解できず目分量で投入
レシピには「塩3つまみ」と書かれていました。
しかし生徒は「少しくらい多くても大丈夫だろう」と目分量で投入したとされています。
「つまみ」という単位を正しく理解できなかったわけです。
料理用語の「ひとつまみ」は、**親指・人差し指・中指の3本でつまんだ量(約1g)**を指します。
「3つまみ」なら約3gです。
これを知らない生徒が手のひら全体で掴んでしまった場合、簡単に規定量を超えてしまいます。
教育現場では、計量方法を具体的に指導することが不可欠です。
ピザ生地に必要な塩の量と塩分過多の危険性

適切な塩の量を理解することが重要です。
適切な塩の量(小麦粉300gに対し塩6g)
ピザ生地の基本レシピでは、**小麦粉300gに対して食塩6g(小さじ1)**が標準とされています。
これは、強力粉150g+薄力粉150gに対する量です。
6gは「塩3つまみ」の約2倍にあたります。
正しく理解していれば、レシピ通りに作れた可能性が高いわけです。
【表2:ピザ生地の適切な塩の量】
| 材料 | 分量 | 備考 |
|---|---|---|
| 強力粉 | 150g | – |
| 薄力粉 | 150g | – |
| 食塩 | 6g(小さじ1) | ✅ 小麦粉300gに対して |
| 「塩ひとつまみ」 | 約1g | 親指・人差し指・中指の3本 |
| 「塩3つまみ」 | 約3g | – |
塩分過多による体への影響
塩分を過剰に摂取すると、体内のナトリウム濃度が急激に上昇します。
これを「高ナトリウム血症」と呼びます。
主な症状は以下の通りです。
・喉の強い渇き
・吐き気・嘔吐
・頭痛
・めまい
・意識障害(重症の場合)
今回の生徒たちは軽症で済みましたが、重症化すれば命に関わる危険性すらあります。
子どもは特に注意が必要な理由
子どもは大人より体が小さいため、同じ塩分量でも影響が大きいとされています。
厚生労働省の基準では、中学生の1日の食塩摂取目標量は以下の通りです。
・男子:7.5g未満
・女子:6.5g未満
仮に規定量の2〜3倍の塩が入ったピザを食べた場合、1食で1日分の塩分を軽く超えてしまいます。
つまり調理実習での計量は、生徒の健康を守るために極めて重要です。
元教師が見る調理実習の安全管理体制

35年間の教育経験から、この事故を分析します。
35年の経験から見た調理実習のリスク
調理実習には様々なリスクがあります。
包丁でのケガ、火傷、食中毒が代表的です。
そして今回のような調味料の過剰投入も重大なリスクとなります。
教育現場では、調理実習前に以下を確認することが不可欠です。
・計量器具の使い方
・調味料の適切な量
・味見の重要性
・「おかしい」と思ったら報告する
特に「味見」は必須。
食べる前に必ず味見をさせ、異常があれば報告させる体制が重要です。
これだけで多くの事故は防げると考えられます。
リレー方式の構造的問題
今回の事故で注目すべきは「リレー方式」の問題点です。
生地を作った生徒と食べた生徒が別だったため、誰も責任を持って確認しませんでした。
これは構造的な欠陥と言えます。
リレー方式自体は時間短縮のメリットがあります。
しかし、安全管理の観点からは問題が多いと指摘されています。
教育現場でリレー方式を採用する場合、教師が中間チェックを入れることが必須です。
生地の段階で味見をし、塩分濃度を確認する必要があります。
これがなければ、今回のような事故は防げません。
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教師の見回りと確認体制の重要性
調理実習中、教師は見回るだけでは不十分。
各班の進捗を確認し、計量の瞬間に立ち会うことが重要。
「塩を入れます」と報告させ、その場で確認する体制が必要です。
これが生徒の命を守る唯一の方法と言えます。
北九州市教育委員会も「調理中の目配り不足」を認め、今後の指導体制を改善すると発表しました。
学校での安全教育と保護者ができること

学校と家庭、両方の協力が必要です。
事前の安全指導と計量の確認
学校側ができる対策は以下の通り。
・事前に計量方法を具体的に指導する
・料理用語(「ひとつまみ」など)を正確に教える
・デジタルスケールを使わせる
・「目分量は厳禁」を徹底する
・味見を義務化する
特に重要なのは「レシピ用語の正確な理解」です。
「ひとつまみ」「少々」「適量」といった用語を数字で示す必要があります。
これがなければ、生徒は正しく理解できません。
教師の責任と学校の体制
教師には「安全配慮義務」があります。
調理実習は「楽しい授業」である前に「安全な授業」でなければなりません。
今回の事故を受け、全国の学校で以下の対策が求められます。
・リレー方式の見直し
・教師の複数配置
・計量チェックリストの導入
・味見の義務化
これは予算の問題ではなく、意識の問題です。
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家庭でできるサポートと声かけ
保護者ができることもあります。
調理実習の前に、子どもとこのような会話をすることが有効です。
「計量はちゃんとやってね」
「おかしいと思ったら先生に報告しなさい」
「味見は必ずしてね」
また、家庭での料理を通じて「計量の大切さ」を教えることも重要です。
一緒に料理を作りながら「塩はこれくらい」と実際に見せることが、最良の食育となります。
この記事に関するQ&A
この記事に関するQ&Aです。
Q1:事故はいつ発生しましたか?
A:2026年1月23日午後2時頃、福岡県北九州市の本城中学校で発生しました。調理実習後に8人が体調不良を訴え、うち6人が病院に搬送されました。
Q2:搬送された生徒の容態は?
A:6人とも異常なしと診断され、軽症でした。一時的なナトリウム過多による体調不良と見られています。
Q3:適切な塩の量はどれくらいですか?
A:ピザ生地の場合、小麦粉300gに対して食塩6g(小さじ1)が適量です。「塩3つまみ」は約3gで、半量にあたります。
Q4:塩分過多の症状はどのようなものですか?
A:喉の渇き、吐き気、頭痛、めまいなどが主な症状です。重症化すると意識障害を引き起こす危険性もあります。
Q5:調理実習は危険なので中止すべきですか?
A:中止ではなく、適切な指導と対策が重要です。事前の安全指導と教師の見回りで事故は防げると考えられます。
Q6:家庭でできる応急処置はありますか?
A:水を飲ませて安静にし、すぐに医療機関に連絡してください。無理に吐かせるのは避けましょう。
筆者紹介|なおじ
元社会科教師として35年間、小学校・中学校で教壇に立ち、調理実習の安全指導にも携わってきました。
教育現場では、生徒の安全を第一に考えた授業設計を心がけてきました。