
2025年参院選で参政党など新興4党が計24議席を獲得した背景には、長期化する経済停滞と既成政治への強い不満があった。
各党は今後の連携を模索するが、政策の違いから難航が予想される。
現場取材で見えた有権者の本音と政界再編の可能性を探った。
◆ 選挙戦終盤に見えた「風」の正体
「今回は違う。これまでにない手応えを感じる」
参政党の神谷宗幣代表は投開票日前日の7月19日夜、大阪市内での最後の街頭演説でこう語った。
聴衆約800人が詰めかけ、演説後も質問が相次いだ。
参政党は改選前の1議席から14議席へと大幅増を実現。
比例代表では約465万票を獲得し、得票率は9.8%に達した。
同党が重点的に訴えた「日本人ファースト」の主張が、特に30〜50代の有権者層に響いた形だ。
選挙戦を通じて同党が強調したのは、ガソリン税の暫定税率廃止と消費税の段階的減税だった。
神谷代表は「庶民の生活を直撃する物価高への具体的対策を示した」と振り返る。
◆ 各党の明暗分かれる選挙結果
与党の歴史的敗北も際立った。
自民党は改選67議席から39議席へと大幅減。公明党も改選14議席から8議席に後退し、与党全体で28議席減の大敗を喫した。
自民党の茂木敏充幹事長は21日未明の記者会見で「国民の厳しい審判を真摯に受け止める」と述べたが、党内からは「政治資金問題の影響が予想以上に大きかった」(党幹部)との声が漏れる。
一方、野党側も明暗が分かれた。
立憲民主党は改選23議席から26議席へと微増にとどまったが、国民民主党は改選4議席から17議席へと大躍進。
玉木雄一郎代表は「現実的な政策路線が評価された」と手応えを語った。
◆ 有権者の声に見る「変化への期待」
投票所での有権者への聞き取り調査からは、既成政治への強い不満が浮き彫りになった。
東京都内の会社員男性(42)は「自民党も立憲も代わり映えしない。参政党は新しい風を感じる」と話し、参政党に投票したという。
大阪府内の主婦(38)は「消費税を下げると言ってくれるのは参政党だけ。生活が苦しいので期待したい」と語った。
出口調査(共同通信)によると、参政党支持者の**68%が「政治の変化を期待」**と回答。
従来の保守・リベラルの枠を超えた支持の広がりを見せた。
◆ 永田町に走る激震と連携模索
選挙結果を受け、永田町では早くも政界再編への憶測が飛び交っている。
与党は過半数割れにより、法案審議で野党の協力を得る必要に迫られた。
自民党の政調幹部は「新興政党との部分連携も視野に入れざるを得ない」と本音を漏らす。
野党側では立憲民主党の野田佳彦代表が「野党が連携して力を発揮する構図を作りたい」と呼びかけるが、各党の温度差は大きい。
参政党の神谷代表は8月9日の福岡市での演説で「単なる数合わせではいけない。政策の一致が前提だ」と述べ、独自路線を維持する姿勢を鮮明にした。
◆ 政策面での課題と対立軸
新興政党の存在感が増す中、政策面での違いも鮮明になっている。
消費税減税では、参政党が「5%への段階的引き下げ」を主張する一方、れいわ新選組は「即座の廃止」を求める。
国民民主党は「時限的な減税」にとどめる慎重姿勢で、野党内でも主張が割れる状況だ。
外交・安全保障政策でも違いは大きい。
日本保守党は「防衛費GDP比2%達成」を掲げる一方、れいわは「軍事費削減」を主張。
参政党は「現実的な安保政策」を標榜するが、具体的な内容は曖昧な部分も多い。
◆ 今後の政局と衆院選への影響
政治アナリストの中北浩爾氏(一橋大学教授)は「新興政党の躍進は、有権者の政治不信の表れ。
次期衆院選でも同様の傾向が続く可能性がある」と分析する。
各党とも次期衆院選を見据えた動きを加速している。
参政党は「衆院でも20議席以上」(神谷代表)を目標に掲げ、組織拡充を進める方針だ。
自民党内では「このままでは政権交代もあり得る」(中堅議員)との危機感が強まっており、石破茂首相の求心力低下も指摘される。
野党第1党の立憲民主党は、新興政党との連携なしには政権交代は困難な状況に追い込まれており、現実的な政策協議が今後の課題となる。
◆ 専門家の見方
政治学者の御厨貴氏(東京大学名誉教授)は
「55年体制以来の政界再編の可能性が見えてきた。ただし、新興政党がどこまで政策実現能力を示せるかが鍵」と指摘する。
投票率は**58.51%**と前回参院選の52.05%を6.46ポイント上回り、政治への関心の高まりも新興政党躍進の追い風となった。
※この記事は2025年8月14日時点の各政党の発表、報道機関の報道、および現地取材に基づいて作成しています。有権者の声は投票所での聞き取り調査によるものです。政治情勢は流動的であり、今後の動向については変化する可能性があります。各政党の政策詳細については、それぞれの公式発表をご確認ください。
