またやってしまった撮り鉄問題
鉄道撮影愛好家の行き過ぎた行為に、ついに鉄道会社が「ノー」を突きつけた。
しなの鉄道が9月から人気車両115系の運行予定発表を全面中止したのだ。
原因となったのは8月上旬の信じがたい事件である。
長野県信濃町で撮影者が住宅敷地に無断侵入し、撮影の邪魔になる庭木を勝手に伐採したというのだから呆れてしまう。

事件の詳細と経緯
8月上旬の衝撃的事件
北しなの線沿線の静かな住宅地で起きた出来事は、もはや趣味の範疇を完全に逸脱していた。
撮影者は住民の許可など一切取らずに敷地内へ侵入。
美しい写真を撮るためとはいえ、他人の財産である庭木を無断で伐採したのである。
被害に遭った住民の心境を察すると胸が痛む。
大切に育てた庭木を、見知らぬ人に勝手に切られる屈辱感は計り知れない。
しなの鉄道の決断
8月10日に住民から苦情を受けた同社は、重い決断を下した。
これまで月1回発表していた「懐かしのカラー・ラッピング車両運用行路」の情報提供を完全停止したのだ。
「発表取りやめは残念だがやむを得ない」という同社のコメントからは、苦渋の思いが伝わってくる。
なぜ115系がこれほど人気なのか

懐かしさが心を揺さぶる車両たち
問題の115系には、鉄道ファンの心をつかむ特別な魅力がある。
初代長野色は白・緑・赤の美しい配色で、1980年代後半から90年代前半の青春時代を思い起こさせる。
当時学生だった人なら、この車両で通学した記憶もあるだろう。
湘南色は緑とオレンジの組み合わせが鮮やか。
旧国鉄時代の東海道線で活躍し、日本の鉄道史に深く刻まれた名塗装である。
撮影欲求を掻き立てる希少性
これらの車両は定期運行ではなく、不定期での運用となっている。
「今を逃したら次はいつ撮れるか分からない」という心理が、撮影者を焦らせているのかもしれない。
元教師が見る撮り鉄問題の本質
教育現場で見た類似パターン
30年間教師を務めた経験から言えば、今回の問題は「目的と手段の逆転」そのものだ。
美しい写真を撮るという目的のため、違法行為という手段を選んでしまう。
子どもたちにも同様の行動パターンが見られた。
テストで良い点を取りたい一心で不正行為に走る生徒と、根本的な構造は変わらない。
一部の撮り鉄は、中学生レベルの精神構造のまま大人になってしまったか。
承認欲求の暴走
SNSで「いいね」を集めたい、他の撮り鉄より良い写真を撮りたい。
そんな承認欲求が理性を麻痺させているのではないだろうか。
被害の実態とエスカレートする問題行動
日常化した迷惑行為
しなの鉄道によると、今回の庭木伐採は氷山の一角に過ぎない。
これまでも以下のような問題が頻発していたという:
- 公道の長時間占領
- 農地や住宅敷地への無断侵入
- 近隣住民への迷惑行為
- 危険な場所での撮影強行
住民の声が届かない現実
地方の沿線住民は高齢化が進んでいる。
声を上げにくい環境につけ込み、好き放題する撮り鉄の存在は許しがたい。
解決への道筋
撮り鉄コミュニティの自浄作用が必要
マナーを守る撮り鉄が大多数であることは理解している。
しかし、問題行為を見て見ぬふりをしていては改善されない。
コミュニティ全体で悪質な行為を糾弾し、排除する仕組み作りが急務だ。
鉄道会社と住民の連携強化
情報提供の完全停止は最終手段である。
段階的な対策として、撮影マナー講習会の開催や、問題撮影者の出入り禁止措置なども検討すべきか。
まとめ:趣味の原点に立ち戻れ
鉄道撮影は本来、車両の美しさや技術の素晴らしさを愛でる文化的活動のはず。
それが一部の身勝手な行為により、社会問題化してしまった現状は非常に残念。
今回のしなの鉄道の決断を重く受け止め、すべての撮り鉄が自らの行動を見直す機会とし、自分たちで自浄作用を発揮してほしい。
そうでなければ、他の鉄道会社でも同様の措置が取られることになるだろう。

