こんにちは、なおじです。
いじめ動画のSNS拡散は、2026年1月に栃木県と大分県で相次いで発生。松本洋平文部科学大臣は緊急会議を招集し、全国の公立学校に対して児童・生徒へのアンケート調査実施を要請する事態となった。
35年間教育現場に携わってきた立場から見ると、この問題の本質は単なる「いじめの延長」ではない。SNS時代特有の構造的課題がある。
この記事では、事件の実態と文科省の対応、そして学校・家庭でできる具体的ないじめ動画 SNS 対策を整理していく。

この記事でわかること
- 2026年1月に発生したいじめ動画SNS拡散事件の概要と文科省の対応
- なぜいじめ動画が拡散されるのか、構造的要因の分析
- 学校が実施すべき5つの実践的対策(元校長の経験から)
- 家庭でできる3つの予防策とデジタルシチズンシップ教育
- いじめ動画発見時の対処法と今後の対策見通し
2026年1月に相次いだ中高生いじめ動画SNS拡散事件の実態
大分市・栃木県で発生した暴行動画拡散の概要
2026年1月8日未明、大分市の中学校で撮影された生徒間の暴行動画がSNS上で拡散された。動画は暴露系インフルエンサーによって投稿され、学校名まで実名で公開される事態となった。
これとほぼ同時期に、栃木県の県立高校でも男子トイレ内での暴行動画が拡散された。さらに熊本市、福岡県直方市でも同様の動画が相次いで発見されている。
大分市教育委員会は投稿翌日の夜に記者会見を開いた。動画は2025年7月に撮影されたものであり、加害生徒は暴力行為を認めていると発表。
半年前の出来事が突然拡散され、学校側が事態を把握する前に社会問題化した点が特徴。いじめ動画のSNS拡散は、時間差で発覚するという新たなリスクを示している。
文科省が緊急会議を招集した背景
松本洋平文部科学大臣は2026年1月9日の閣議後会見で、この問題に言及。
「安全で安心であるべき学校での暴力行為やいじめは決してあってはならない」と述べ、都道府県・政令市の教育委員会を対象とした緊急オンライン会議の開催を表明した。
文科省は1月14日に緊急会議を実施。全ての公立小中高校に対して今年度中に児童・生徒へのアンケート調査と面談の実施を求めている。
この要請の背景には、見過ごされているいじめや暴力行為がないか全国規模で点検する狙いがある。
また、こども家庭庁や警察庁など関係省庁が集まる対策会議も開催され、省庁横断的な取り組みが進められる見込み。
教育現場だけでは対応しきれない問題として、国が本格的に動き始めたと言える。
なぜいじめ動画はSNSで拡散されるのか|構造的要因の分析

「可視化」「拡散」「永続化」という3つの特徴
いじめ動画 SNS 対策を考える上で、まず構造的要因を理解する必要がある。なおじが35年間教育現場に携わってきた中で、いじめの構造は根本的に変化した。
最も大きな違いは、いじめが「可視化」され「拡散」され「永続化」するという3つの特徴だ。
かつてのいじめは閉じられた空間で行われた。被害者が声を上げない限り発覚しにくかった。
しかし現在は、スマートフォンで簡単に動画が撮影される。SNSを通じて瞬時に数万人、数十万人に拡散される。
さらに、一度拡散した動画はデジタルタトゥーとして永続的に残り続ける。削除しても完全には消えない。
この3つの特徴が、いじめ問題を従来とは全く異なる次元に引き上げている。
承認欲求とSNS文化が生む加害者心理の変化
加害者側の心理にも大きな変化がある。承認欲求とSNSの「いいね」文化が結びつき、暴力行為を撮影・投稿すること自体が目的化するケースが増えている。
教室内で起きていたいじめが、不特定多数の「観客」を意識したパフォーマンスに変質している。動画の再生回数や「いいね」の数が、加害行為をエスカレートさせる要因になっているのだ。
なおじが中学校で校長を務めていた時期にも、SNSトラブルは急増していた。しかし当時はまだ動画拡散までは至っていなかった。
わずか数年でここまで状況が変化したことに、教育現場の対応の難しさを感じる。
35年前と現在のいじめ構造の比較
【表:いじめ動画SNS拡散問題の構造的要因】
| 要因 | 内容 | 従来のいじめとの違い | 対策のポイント |
|---|---|---|---|
| 可視化 | スマホで簡単に撮影・記録される | 閉じた空間で発覚しにくかった | 早期発見システムの構築 |
| 拡散 | SNSで瞬時に数万人に拡散 | 限られた人しか知らなかった | デジタルフットプリント教育 |
| 永続化 | デジタルタトゥーとして残り続ける | 時間とともに風化した | 投稿前の判断力を育てる |
| 承認欲求 | 「いいね」目的でエスカレート | 暴力自体が目的だった | SNSリテラシー教育 |
(出典:元教師35年の経験と文科省2026年1月緊急会議資料を基に作成)
この表が示すのは、いじめの「質的変化」。かつては限られた空間で完結していた問題が、現在は全世界に拡散し永続的に残る問題に変わっている。
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学校側が取るべき5つの実践的対策

元校長として11年間、いじめ問題に向き合ってきた経験から、学校が今すぐ実施すべき対策を5つ提案する。
早期発見システムの構築(アンケート・相談窓口)
定期的な無記名アンケートと、いつでも相談できるオンラインフォームの設置が不可欠。
文科省が今回要請した「全公立校での今年度中のアンケート実施」は、まさにこの早期発見システムを全国で標準化する狙いがある。
なおじが校長時代に実施していたのは、学期に1回の無記名アンケートだった。QRコードで24時間アクセスできる相談フォームの設置を試みていたが実現前に退職。
だが2026年現在は、その学校でもシステム化されている。
このシステムの利点は、被害者が声を上げやすい環境を作れること。対面では言いにくいことも、匿名性が保証されれば報告しやすくなる。
SNSリテラシー教育の徹底
単なる「SNSは危険」という指導では効果が薄い。具体的な事例を用いた実践的教育が必要。
「動画を撮影・拡散することが犯罪になる」「デジタルタトゥーとして一生残る」という法的・社会的リスクを、できれば小学校高学年・遅くとも中学1年生から繰り返し伝えることが重要。
特に効果的なのは、実際の事例を示すこと。
今回の大分市や栃木県の事案を教材として、「この行為がどのような結果を招いたか」を具体的に説明する。
抽象的な道徳論ではなく、具体的なリスクを示すことで、生徒の判断力を育てることができる。
保護者との連携強化
学校だけでは限界がある。保護者向け説明会やSNS利用に関する家庭内ルール作りの支援が必要だ。
今回の大分市の事例でも、事態発覚後すぐに保護者説明会が開催されている。しかし理想は予防段階からの連携。
なおじが校長として実施していたのは、年度初めに「SNSとの付き合い方」をテーマにした保護者説明会だった。専門家を招いて、家庭でできる対策を示してはいた。
だが、現在はもっと具体的に示すことが重要になるだろう。
保護者が問題の構造を理解することで、家庭での予防策が効果的に機能する。
被害者ケア体制の整備
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの連携体制を事前に構築しておくことが重要。動画拡散による二次被害(誹謗中傷、個人情報の特定など)への対応も含めた包括的ケアが求められる。
被害者にとって、動画が拡散された後の精神的ダメージは計り知れない。迅速かつ継続的なケアが必要だ。
加害者への教育的指導
警察連携も視野に入れつつ、加害生徒に対しては懲罰ではなく教育的指導を基本とすべきだ。なぜその行為がいけないのか、被害者がどれほど傷ついているのかを理解させる対話が、再発防止の鍵となる。
単に罰を与えるだけでは、加害者の心理は変わらない。行為の重大性を理解させ、二度と繰り返さない決意を持たせることが教育の役割だ。
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家庭でできる3つの予防策

保護者の皆さんができる予防策を3つ整理する。子どもを加害者にも被害者にもしないために、家庭での取り組みが欠かせない。
日常的な対話の重要性
「今日学校どうだった?」という何気ない会話が、子どもの変化に気づく第一歩。被害者になっている場合は表情や言動に変化が現れる。
加害者になっている場合はスマホの使用時間や態度に異変が見られることが多い。なおじが担任をしていた頃、保護者との面談で「最近子どもが急にスマホを隠すようになった」という相談から、いじめの加害行為が発覚したケースがあった。
日常的な対話を通じて、子どもの小さな変化を見逃さないことが重要だ。
SNS利用ルールの設定
家庭内で明確なルールを設けることが重要。
**「深夜の使用禁止」「投稿前に保護者に見せる」「個人を特定できる動画は撮らない」**などの具体的なルールを、子どもと一緒に決めることがポイント。
一方的な押し付けではなく、なぜそのルールが必要なのかを話し合うプロセスが大切。子ども自身が納得してルールを守ることで、実効性が高まる。
デジタルシチズンシップ教育
デジタル時代の市民として必要な知識とモラルを家庭でも教える必要がある。
**「ネット上でも現実と同じルールが適用される」「一度拡散した情報は消せない」「他人の人権を尊重する」**という基本原則を、日常会話の中で伝えていく。
特に重要なのは、「デジタルタトゥー」の概念を理解させることだ。一度ネット上に公開された情報は、完全に削除することが極めて困難だ。
この事実を子どもが理解していれば、安易な投稿を防ぐことができる。
【表:学校・家庭でできる対策一覧】
| 実施主体 | 対策 | 具体的内容 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 学校 | 早期発見システム | 無記名アンケート・24時間相談フォーム | ★★★★★ |
| 学校 | SNSリテラシー教育 | 法的リスク・デジタルタトゥーの具体例教育 | ★★★★★ |
| 学校 | 保護者連携 | 説明会・家庭内ルール作り支援 | ★★★★☆ |
| 家庭 | 日常対話 | 変化に気づく「今日どうだった?」の習慣化 | ★★★★★ |
| 家庭 | 利用ルール設定 | 深夜使用禁止・投稿前確認など具体的ルール | ★★★★☆ |
| 家庭 | デジタルシチズンシップ | ネット上でも現実と同じルールを教える | ★★★★☆ |
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Q&Aで振り返るいじめ動画SNS拡散問題
Q1. いじめ動画を見つけたらどうすればいいですか?
学校と警察の両方に通報してください。動画のスクリーンショットを保存し、URLを記録しておくことも重要です。
また、SNSのプラットフォームにも通報機能がありますので、そちらも活用しましょう。絶対にしてはいけないのは、動画を拡散したり、コメント欄で被害者・加害者を特定しようとする行為です。
Q2. 子どもがいじめ動画を拡散してしまったら?
すぐに学校に相談し、投稿を削除させてください。ただし、削除しても完全には消えない可能性があることを子どもに理解させることが重要です。
法的責任が問われる可能性もありますので、必要に応じて弁護士への相談も検討してください。なおじの経験では、こうした事態になった場合、保護者が感情的にならず冷静に対処することが、子どもの更生につながります。
Q3. 文科省の対策会議で何が決まりましたか?
2026年1月14日に開催された緊急会議では、見過ごされているいじめや暴力行為がないか全公立校で点検することが要請されました。具体的には、今年度中に全ての児童・生徒へのアンケート調査と、担任やスクールカウンセラーによる面談の実施が求められています。
また、こども家庭庁や警察庁など関係省庁が集まる対策会議も開催され、省庁横断的な取り組みが進められる見込みです。
Q4. 「いじり」と「いじめ」の境界線はどこですか?
相手が嫌だと感じたらそれはいじめです。意図や冗談かどうかは関係ありません。
やられている側の感じ方が全てです。35年間教師をしてきた経験から言えるのは、「いじり」という言葉でいじめを正当化する構造が非常に多いということです。
Q5. SNSリテラシー教育は何歳から始めるべきですか?
小学校高学年からが理想です。スマホを持つ前に「デジタルタトゥー」「法的リスク」を具体例で教えることが予防につながります。
中学生になってからでは遅い場合もあります。早期からの教育が、将来的なトラブルを防ぐ最も効果的な方法です。
筆者紹介|なおじ
元社会科教師として35年間教壇に立ち、11年間は校長として学校運営に携わってきました。現在は8つのブログでドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学び・書評を書いています。
政治・事件記事では「データの裏にある構造」や「現場の実態」を丁寧に解説するスタイルを心がけています。教育現場での35年の経験を活かし、実践的な視点からの分析を提供しています。