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中露戦略爆撃機が東京ルートで飛行|日米共同訓練で示した抑止力の意味

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目次

日米共同訓練が示した抑止力の構造

レーダー照射

では、日米はどう対応したのでしょう。

中露の動きに対し、自衛隊と米軍は12月10日、日本海上空で共同訓練を実施しました。

参加したのは、核兵器搭載可能な米軍のB52戦略爆撃機2機航空自衛隊のF35ステルス戦闘機3機F15戦闘機3機です。

この組み合わせは偶然ではなく、「日本列島上空を日米が協力して守る」という抑止メッセージそのものと位置づけられます。

軍事的パワーバランスの演出

中露が見せたのが「東京を狙い得る能力」なら、日米が示したのは「東京を含む日本とその周辺空域を守り抜く決意と能力」です。

軍事的パワーバランスの演出が、短期間で応酬された構図になっています。

挑発には過剰反応せず、しかし相手に「攻撃すれば痛みを伴う」と理解させる実力を静かに提示することが、現実の安全保障における王道です。

【表:中露の軍事行動と日米の対応】

日付中露の動き日米の対応狙いと意味
12月6日中国空母「遼寧」によるレーダー照射抗議と国際法違反の指摘日本への威嚇と反応の観察
12月9日中露戦略爆撃機の東京方面共同飛行(即時対応なし)首都圏を射程に収める能力の誇示
12月10日(なし)日米共同訓練(B52+F35・F15)日米連携による抑止力の提示

※出典:防衛省発表および各種報道(2025年12月)をもとに作成

「専守防衛」と抑止力をめぐる世論の変化

今回のニュースに対するヤフーコメントには、日本の防衛政策をめぐる世論の変化が読み取れます。

「日本が核兵器を持っていれば中露もそう簡単には手を出せないのではないか」「専守防衛で攻撃力がないから舐められてしまう」といった声が複数見られました。

さらに「爆撃機保有や核共有、核配備も含めた現実的な防衛整備を検討すべき」という意見も登場しています。

「相手に損害を与える能力」の必要性

核武装や核共有には、現行憲法、国内世論、国際的枠組み(NPT)を踏まえた重い議論が必要です。

しかし、「相手に確実な損害を与えられる能力があって初めて抑止は成り立つ」という原則に、多くの国民が徐々に目を向け始めていることは無視できない変化です。

防衛費9兆円を「多すぎる」と切り捨てる前に、何にどのように使い、どの程度の抑止力を持てば、今回のような示威行動に「それ以上のエスカレーションは割に合わない」と思わせられるのか――そこまで踏み込んだ議論が求められています。

エネルギーと防衛をセットで考える構造的課題

空母

別のコメントは「外交は重要だが、その背景に経済力と軍事力があってこそ」と指摘しています。

この視点は、サハリン2に象徴されるエネルギー面でのロシア依存という日本の脆弱性にも通じます。

サハリン2からは、生産される液化天然ガス(LNG)の約6割が日本に輸出されており、三井物産や三菱商事などの日本企業も出資しています。

エネルギーの多角化と防衛力整備

ロシア産LNGへの依存度が高い現状で、中露と真正面から対峙することは容易ではありません。

だからこそ、エネルギーの多角化・自給力向上と、防衛力整備・同盟強化は本来セットで議論されるべきテーマです。

「経済と安全保障」「外交と軍事」をバラバラではなく、統合して考えることが問われています。

👉関連記事:経済安全保障推進法をわかりやすく|元教師が解説する日本の新しい安全保障

「前線としての日本」という現実をどう受け止めるか

小泉進次郎

今回の中露爆撃機共同飛行をどう位置づけるべきでしょうか。

第一に、好むと好まざるにかかわらず日本がすでに「前線」であるという自覚を、国民一人ひとりが持つ契機にすることです。

沖縄本島・宮古島、台湾、グアム、横須賀、東京――これらはすべてインド太平洋の安全保障ライン上に並ぶ点であり、日本はその要石の一つに過ぎません。

「では日本は何をすべきか」という議論へ

第二に、中露の動きだけを批判して終わるのではなく、「では日本は何をすべきか」という議論に進むことです。

防衛費9兆円の使途、爆撃機の保有、長射程ミサイル、サイバー・宇宙領域の防衛など、「専守防衛の中身」自体をアップデートしていく必要があります。

コメント欄にあった「平和を叫ぶだけでは平和は守れない。備えこそ最大の抑止だ」という意見は、この点を的確に突いています。

「武力行使を望まないからこそ」の防衛力

必要なのは、「武力行使を望まないからこそ、防衛力を整え、現実を直視した抑止を構築する」という発想です。

軍事力を持つことは戦争のためではなく、戦争を起こさせないための手段でもあります。

その基本に立ち返った上で、爆撃機の保有、長射程ミサイル、核共有の是非など、「専守防衛の再定義」を冷静に議論していく段階に来ていると整理できます。

👉関連記事:レーダー照射は何が問題なのか|軍事的意味と日本の対応を元教師が解説

Q&Aで振り返る中露爆撃機共同飛行と日米の対応

Q1. 中露戦略爆撃機が「東京ルート」を飛んだのはなぜですか?

日本の首都圏と米軍基地を射程に収めていることを誇示し、高市政権への牽制と軍事的プレゼンスを示す狙いがあったと分析されています。

Q2. 日米共同訓練はどのような意味を持ちますか?

中露の示威行動に対し、「日本列島を日米が協力して守る」という抑止メッセージを静かに提示したものと位置づけられます。

Q3. 専守防衛の枠組みで日本は対応できますか?

現行の専守防衛の枠内でも対応は可能ですが、長射程ミサイルや爆撃機保有など、「専守防衛の中身」の再定義が議論されています。

Q4. エネルギー依存はどう影響しますか?

ロシア産LNGへの依存度が高い現状では、対露強硬姿勢に限界があり、エネルギー多角化と防衛力整備をセットで進める必要があります。

Q5. 今回の飛行は高市政権への反発が原因ですか?

台湾有事答弁への反発も一因ですが、中露による威嚇行動は高市政権以前から繰り返されており、構造的な問題と捉えるべきです。


筆者紹介|なおじ

元社会科教師として35年間教壇に立ち、歴史・政治・国際関係を生徒たちに教えてきました。

現在は7つのブログでドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学びをテーマに執筆しています。

このブログ「日本の政治」語りでは、制度の背景や歴史的文脈を丁寧に解説し、読者の皆さんが「自分で考える材料」を提供することを大切にしています。

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