こんにちは、なおじです。
最近のニュースで「中国軍機が航空自衛隊機にレーダー照射」「レーダー照射問題が再燃」といった見出しが、再び紙面やネットを賑わせています。
しかし、「そもそもレーダー照射って何?」「レーダーを当てただけなのに、なぜこんなに大騒ぎになるの?」と感じている方もおいでになるかも…。
そこで、この記事では、元社会科教師として、安全保障や国際関係の授業で話してきた内容も踏まえつつ、「レーダー照射は何が問題なのか」を、できるだけ専門用語を避けて、わかりやすく解説してみました。

この記事でわかること
- 「レーダー照射」とは何をしている行為なのか、基本的なしくみ
- なぜ各国がレーダー照射を重大な問題として受け止めるのか
- 国際法や実務慣行の中で、レーダー照射がどのような“グレーゾーン”にあるのか
- 日中・日韓関係など、東アジアの安全保障とレーダー照射問題のつながり
- ニュースを読むときに意識したい「構造的な背景」の見方
レーダー照射は何が問題なのか
レーダー照射とは何をしているのか
まず、「レーダー照射」という言葉のイメージを整理しておきましょう。
ふだん私たちが空港や天気予報で聞く「レーダー」は、電波を飛ばして物体に当て、その跳ね返りを受信することで、距離や方向を測る仕組みです。
軍事の世界でも、レーダーそのものは珍しいものではなく、航空機や艦艇が周囲の状況を把握するために、常にレーダーで“見張り”をしています。
ここで問題になるのが、「どの種類のレーダーか」「どの距離と態勢で照射したか」です。
特に、ミサイルや砲を命中させるために使う「射撃管制レーダー(攻撃用のレーダー)」を相手の軍用機に向けて照射すると、「いつでも撃てる体制に入った」と受け取られてしまうのです。
つまりレーダー照射とは、単に「ちょっと電波を当てただけ」ではなく、「照準を合わせる行為」と感じられる行動だと理解しておく必要があります。
だから問題なんです。
国際法と“グレーゾーン”としてのレーダー照射
国際法上の位置づけはどうなっているか
ここで、多くの方が気になるのが「レーダー照射は国際法違反なのか?」という点でしょう。
現時点で、「レーダー照射そのもの」だけを明確に禁止する国際条約があるわけではないのです。
しかし、だからといって「何をやってもよい」という白紙委任ではなく、いくつかのルールや枠組みの中で判断されています。
代表的なのが、国連憲章にある「武力による威嚇の禁止」という考え方です。
射撃管制レーダーの照射が、この「威嚇」に該当するかどうかは解釈の余地があり、まさに“グレーゾーン”の部分と言えます。
このあたりは、日本の安全保障法制をめぐる議論ともつながってきます。
「存立危機事態とは何か」「台湾有事をどう位置づけるのか」については、別記事で詳しく整理していますので、合わせて読むと全体像がつかみやすくなります。
関連記事:👉 存立危機事態とは?高市首相の台湾有事発言をわかりやすく元教師が解説
実務慣行と二国間の取り決め
また、各国は二国間・多国間の枠組みで、艦艇や航空機の接近時に「危険な行動を避けるための取り決め」を結ぶことがあります。
そうした枠組みや実務上のルールに反する形でレーダー照射が行われれば、たとえ条約レベルで明文化されていなくても、「約束違反」「信頼関係を損なう行為」として外交問題化します。
レーダー照射問題は、まさにこの国際法と実務慣行の“グレーゾーン”に位置していると言えます。
日中・日韓関係とレーダー照射
東アジアの軍事的緊張とレーダー照射
レーダー照射問題が注目される背景には、日本と近隣諸国との関係があります。
日中関係では、東シナ海や台湾周辺での活動が増える中で、自衛隊機と中国軍機の距離が近づき、緊張した場面も報じられてきました。
レーダー照射は、そうした緊張の最前線で起こる「一つの事象」に過ぎませんが、その裏側には領有権問題や海洋進出、安全保障政策の違いといった大きなテーマが横たわっています。
戦後の日中関係を考えるうえでは、「そもそもサンフランシスコ講和条約の場に中国がいなかった」という歴史的事実も欠かせません。
なぜ中国が講和会議に招かれなかったのか、そのことが台湾問題や現在の東アジア情勢にどうつながっているのかについては、こちらで詳しく解説しています。
関連記事:👉 サンフランシスコ講和条約に中国が招かれなかった理由とは?冷戦構造と台湾問題から読み解く
日韓関係でも、過去にレーダー照射をめぐる大きな対立がありました。
お互いの言い分が食い違い、「照射した・していない」「どのレーダーを使ったのか」といった綱引きが続き、結果として国民感情の悪化にもつながりました。
ここから見えてくるのは、レーダー照射そのものだけでなく、「その後の説明・検証・情報公開の仕方」が、二国間関係を左右する重大な要素になっているという点です。
レーダー照射問題を具体的な事例から考える
今回のように、中国軍機によるレーダー照射が報じられたケースでは、単発のニュースとして消費してしまうと、毎回「またか」で終わってしまいます。
しかし、いつどこで、どのような状況下で行われたのか、防衛省や政府がどのように発表し、説明しているのかを追っていくと、「エスカレーションをどう防ぐか」という視点が見えてきます。
具体的な事例としては、防衛省が12月6日に公表したレーダー照射問題の説明があります。
その発表の中身や、日本側がどのように中国側の主張と向き合っているのかについては、別記事で詳しく整理していますので、こちらも併せてご覧ください。