
こんにちは、なおじです。
2025年2月、トランプ米大統領はウクライナへの支援の見返りとして5000億ドル相当のレアアースを要求すると発表しました 。この要求の背景には、ウクライナが保有する豊富な鉱物資源をめぐる国際的な争奪戦が存在します 。nri+1
この記事では、トランプ政権の資源要求の実態と、ウクライナを巡る資源争奪戦の構図を、元社会科教師の視点から整理していきます。
この記事でわかること
- トランプ政権がウクライナに要求した資源供与の具体的な内容とその金額
- ウクライナが保有するリチウム・レアアース・チタンなどの埋蔵量と世界シェア
- ロシア軍がドネツク州シェフチェンコ鉱床を制圧した地政学的意味
- 中国がレアアース供給で世界の70%を握る現状と資源戦略
- ゼレンスキー大統領が資源取引に応じる背景と安全保障上の狙い
- 日本企業が直面するサプライチェーンリスクと対応策
トランプ政権が求めた資源供与の実態
5000億ドル分のレアアース要求とは
トランプ米大統領は2025年2月10日のインタビューで、ウクライナへの軍事支援の見返りとして5000億ドル分のレアアースを要求し、ウクライナ側もこれに同意したと説明しました。
この要求は「再建投資基金」協定という形で提案されたものです。米財務長官ベッセントがウクライナを訪問した際には、ウクライナの鉱物資源権益の5割を米国に与える協定案も提示されました。
米ウクライナ資源協定の枠組み
2025年9月には、米国の国際開発金融公社(DFC)とウクライナ政府が投資基金にそれぞれ出資し、計1億5000万ドル(約220億円)を拠出すると発表しました。
この協定は4月に結ばれたもので、ウクライナの資源開発に関連事業へ資金を提供する仕組みです。トランプ政権が資源開発の権益を持つことで、ウクライナ支援への関与継続を担保する措置の一つとされています。
ウクライナが保有する戦略資源の全体像
重要鉱物資源の埋蔵量
ウクライナは世界の鉱物資源の5%を保有する資源の宝庫です。EU(欧州連合)が指定する重要鉱物34種のうち22種が埋蔵されています。
【表:ウクライナが保有する主要戦略資源】
| 資源名 | 推定埋蔵量 | 欧州全体での割合 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| リチウム | 約50万トン | 欧州全体の3分の1 | EV(電気自動車)バッテリー |
| チタン | – | – | 航空機機体・建設材料 |
| レアアース | – | – | 半導体・電子機器 |
ウクライナの重要資源埋蔵量は12兆ドル相当と推定され、石炭などの天然資源すべてを含めると26兆ドルとの見方もあります。
リチウム資源の戦略的重要性
特にEV(電気自動車)やスマートフォンの電池に利用されるリチウムの埋蔵量は、欧州全体の3分の1を占めます。
このリチウム資源は、世界の脱炭素化とEV普及において極めて重要な位置づけとなっています。
ロシア軍によるシェフチェンコ鉱床制圧の衝撃
ドネツク州の大規模リチウム鉱床
ロシア軍は2025年6月、ウクライナ東部ドネツク州で付近に大規模なリチウム鉱床があるとされる集落シェフチェンコを制圧しました。
この付近では旧ソ連時代の1982年にリチウム鉱床が発見されており、商業採掘が可能な深さに膨大な埋蔵量がある可能性が示されています。ウクライナ地質調査局によると、この鉱床はシェフチェンコの東部郊外に位置し、面積は約40ヘクタールです。
シェフチェンコ・リチウム鉱山の喪失
ロシア・スプートニク社が2025年1月6日に伝えたところによれば、ロシア軍はドネツク州西部に進軍し、国内最大のシェフチェンコ・リチウム鉱山を制圧しました。
この鉱床は47万トンに達すると予測されており、ウクライナにとって大きな痛手となっています。シェフチェンコ・リチウム鉱山の開発権については英国に売却していたこともあり、今回の大規模リチウム鉱床の喪失は戦略的に深刻です。
中国のレアアース支配と資源戦略
世界のレアアース供給を握る中国
現在、レアアースの供給は中国が独占的に握っており、世界の約70%を供給しています。
中国は精製や加工能力においても90%を超えるシェアを占めており、その戦略的地位は極めて重要です。地政学的リスクや輸出規制の強化が懸念される中、各国はレアアースの供給源を多様化しようとしています。
中国による資源確保の動き
ロシアがウクライナの資源を独占することで、中国とロシアにおける資源依存度が増し、世界市場の供給がますます不安定になり、価格が高騰することでアメリカ企業の競争力に大きなダメージを与える可能性があります。
ウクライナ政府は、国際社会に向けて「ウクライナのレアアースは中国の独占を崩す鍵になる」とアピールし、欧米諸国にとって魅力的な提案を行っています。
ゼレンスキー大統領の戦略と米国との交渉
資源を「高く売る」戦略
ゼレンスキー大統領は、米国からの軍事支援の継続と、ロシアとの停戦合意後にはウクライナの安全保障の確保を目指し、ウクライナの宝である鉱物資源をできるだけ高く米国に売ろうとしています。
この取引は、一見したところ植民地的搾取にはならない可能性があります。ゼレンスキー大統領は、この取引を自国の長期的な利益につなげることができるとされています。
安全保障と資源のバーター取引
トランプ米大統領は2月22日、ウクライナへの安全保障支援の見返りとして求めている同国の資源権益を譲渡する協定案について「かなり合意に近づいている」との認識を示しました。
資源権益の獲得でウクライナに拠出した資金を「取り戻す」と主張しています。米国のウィットコフ中東担当特使も2月23日、米CNNテレビでウクライナとの資源協定について「今週中に署名されるだろう」と明言しました。
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日本企業が直面する資源リスクと対応策
サプライチェーン多角化の必要性
中国製ドローン部品の入手が難しくなってきています。フライトコントローラー(飛行を制御する装置)やモーター、バッテリー、センサーなどです。
中国は重要鉱物の供給を「武器化」し、米国への圧力を強めようとしています。それに対して、米国政府は重要鉱物サプライチェーン再編の動きを加速しています。
国際協調と技術流出防止
米国政府はウクライナとレアアースなど資源に関する協定を結んだだけでなく、やや強引とも言える外交を進め、グリーンランドやコンゴ共和国での重要鉱物確保に向け動きを活発化しています。
また、国防生産法を活用した重要鉱物の加工など国内生産拡大も進めています。
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Q&Aで振り返るウクライナ資源問題
Q1:トランプ政権がウクライナに要求した資源供与の金額は?
A1:5000億ドル分のレアアースを要求し、軍事支援の見返りとして鉱物資源権益の5割を米国に与える協定案が提示されました。
Q2:ロシア軍が制圧したシェフチェンコ鉱床の重要性は?
A2:推定埋蔵量47万トンのリチウム鉱床で、ウクライナ国内最大の規模を誇り、EV用バッテリー生産に不可欠な資源です。
Q3:中国がレアアース市場で持つ優位性とは?
A3:世界のレアアース供給の70%を占め、精製・加工能力では90%超のシェアを持つため、価格支配力を有しています。
Q4:ゼレンスキー大統領が資源取引に応じる理由は?
A4:米国からの軍事支援継続と停戦後の安全保障確保を目指し、資源を「できるだけ高く」米国に売る戦略を取っています。
Q5:日本企業が取るべきサプライチェーン対策は?
A5:中国依存からの脱却を進め、重要鉱物の供給源を多角化し、国際協調によって持続可能な資源利用モデルを構築する必要があります。
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筆者紹介|なおじ
元社会科教師として35年間教壇に立ち、現代史や国際情勢を生徒たちに伝えてきました。
現在は7つのブログでドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学びをテーマに執筆しています。政治ブログでは「制度の背景」「歴史的文脈」を丁寧に解説し、複雑な国際情勢を分かりやすく読み解くスタイルを心がけています。
資源問題は単なる経済の話ではなく、各国の安全保障と国民生活に直結する重要なテーマです。授業では「なぜその国がその資源を狙うのか」という視点で地政学を教えてきました。
今回のウクライナをめぐる資源争奪戦も、大国の思惑と小国の生き残り戦略が交錯する、まさに現代国際政治の縮図と言えるでしょう。
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