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高市政権と治安対策──闇バイト犯罪への政府の対応は十分か

2026年5月、栃木県上三川町で起きた強盗殺人事件。

実行役は16〜18歳の高校生たち。

「またか」という声が上がる一方で、政府はこの種の犯罪に対してどんな手を打っているのか、疑問に思った方も多いはずです。

こんにちは、なおじです。

高市早苗政権が誕生してから、治安対策の強化が政策の柱のひとつとして掲げられています。

ただ、元社会科教師・元校長として35年間子どもたちと向き合ってきたなおじには、どうしても気になる点があります。

「取り締まりを強化するだけで、本当に解決するのか?」

この記事では、高市政権の闇バイト犯罪対策の中身を整理しながら、「十分か・不十分か」をはっきり論じます。

この記事でわかること

  • 高市政権が打ち出した闇バイト・組織犯罪対策の主な施策
  • 政府の対策が「取り締まり強化」に偏っている理由と背景
  • 処罰強化だけでは解決しない「根本的な問題」
  • 少年法・刑事司法の現状と課題
  • 元社会科教師として考える「本当に必要な対策」

まず結論から答えます

Q1. 高市政権は闇バイト犯罪にどんな対策を打っていますか?

トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)対策として、警察庁の専従チーム強化・SNS事業者への情報開示要請・秘匿アプリの監視強化などが進められています。また、犯罪収益の追跡・没収を強化するマネーロンダリング対策の法整備も検討されています。

Q2. 政府の対策は十分と言えますか?

取り締まり・処罰強化の方向性は正しい一方で、若者を闇バイトに引き込む「貧困・孤立・情報リテラシーの欠如」という根本原因への対策が薄いのが現状です。捕まえることと、そもそも引き込まれない社会をつくることの両輪が必要です。

Q3. なぜ闇バイト犯罪はなくならないのですか?

組織側が「使い捨て可能な実行役」を常に補充できる仕組みを持っているためです。主導者が海外に逃亡しても組織は機能し、実行役の若者を新たにリクルートして活動を続けます。根を断つには組織の資金源・指示系統を壊すことと、若者が「引き込まれない」環境をつくる教育が不可欠です。

目次

高市政権の治安対策とは何か

高市早苗政権は、従来の岸田政権以降の治安対策路線を継続・強化するかたちで、いくつかの具体的な施策を打ち出しています。

特に2025年以降、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)対策が政府の治安政策の重点項目に位置づけられました。

主な施策の中身

現時点で政府・警察庁が進めている主な対策は以下のとおりです。

施策内容
警察庁トクリュウ対策専従チーム強化全国の組織犯罪対策部門を増強
SNS・秘匿アプリへの情報開示要請犯罪利用プラットフォームへの連携強化
マネーロンダリング対策の法整備犯罪収益の追跡・凍結強化
ICPO・海外当局との連携強化海外逃亡犯への国際手配・引き渡し要請
少年法の運用強化逆送(検察官送致)の積極活用

方向性は間違っていません。

実際、上三川事件でも速やかにICPO国際手配が発動されており、捜査の国際連携という点では以前より明らかに機能が高まっています。

「強硬路線」の背景にあるもの

高市政権の治安対策が強化路線をとる背景には、世論の強い要請があります。

2024〜2025年にかけて全国で相次いだ強盗事件——いわゆる「ルフィ事件」以降、「闇バイク犯罪の組織化」が社会問題として強く認識されるようになりました。

選挙政治的にも「治安強化」は支持を得やすいテーマ。

政権与党が強硬姿勢を打ち出すこと自体は、政治的合理性のある選択です。

ただ元教師として一言言わせてもらうと、「合理的な政治判断」と「本当に問題を解決する政策」は、必ずしも一致しません。

取り締まり強化だけでは解決しない理由

政府の対策の多くが「取り締まり・処罰の強化」に集中しているのには理由があります。

行政として最も実行しやすく、成果が目に見えやすいからです。

しかし、なおじには、根本的な疑問が残ります。

実行役は「使い捨て」で補充される

トクリュウの最大の特徴のひとつが、実行役の流動性の高さです。

1人が逮捕されても、組織はSNSや秘匿アプリで次の実行役をすぐに確保できます。

「逮捕→処罰」のサイクルが回り続けるだけで、組織そのものは温存されます。

元教師として言えば、これは「生徒が問題を起こすたびに叱る」ことを繰り返して、「なぜその生徒が問題を起こすのか」を見ていない状態に似ています。

叱ること自体は必要です。

でも、それだけでは同じことが繰り返されます。

若者を「引き込む側」の問題

闇バイトに引き込まれる若者に共通するのは、経済的困窮・社会的孤立・情報リテラシーの欠如という3つの要素です。

  • アルバイトでは生活費が足りない
  • 相談できる大人が周囲にいない
  • 「怪しい仕事」を見抜く判断力が育っていない

これらは学校教育・家庭環境・社会保障の問題であり、警察の強化だけでは解決できません。

高市政権の対策を見渡したとき、この「引き込まれない若者をどう育てるか」という視点が、まだ薄いと感じます。

少年法と刑事司法の現状

上三川事件では、実行役が16〜18歳の少年たちでした。

少年法のもとでは、16歳以上の故意の凶悪犯罪については「逆送(検察官送致)」が可能で、通常の刑事裁判を受けることになります。

少年法は「甘すぎる」のか

「少年法が甘いから未成年が使われる」という議論があります。

なおじは、この見方は正しいと考えています。

組織側が「未成年は処罰が軽い」と認識して実行役に使っているのは、捜査でも明らかになっています。

そして、それ以上に重要なことがあります。

人を殺した。

その事実の重さは、年齢によって変わりません。

被害者・富山英子さんの命は、加害者が16歳であっても18歳であっても、同じように奪われています。

遺族の悲しみに、「未成年だから」という括りは関係ない。

元校長として、少年法の趣旨が「更生と社会復帰」にあることは理解しています。

更生の機会は、もちろん担保されるべきです。

しかし、更生とは「自分のやったことに向き合い、責任を取ること」から始まるはずです。

「守られながら更生する」と「責任を取りながら更生する」は、まったく別のことです。

被害者家族が「なぜあの子たちは守られるのか」と感じる現実を、制度は正面から受け止める必要があります。

少年法の理念を守りながら、同時に**「自分のやったことに責任を取らせる」という姿勢**を制度に組み込むこと。

それが、なおじの考える少年法改正の方向性です。

「指示役」への処罰強化は正しい

一方、組織の指示役・主導役への処罰強化については、なおじは明確に「賛成」です。

上三川事件の益田和彦容疑者のように、自分は安全な場所にいながら未成年を犯行に送り込む人物への処罰が、実行役への処罰と同等以下というのは、制度として歪みがあります。

「使い捨てにした側」が最も重い責任を負う仕組みの整備は、急務です。

元教師が考える「本当に必要な対策」

治安対策の強化は必要です。

ただ、それだけでは不十分。

なおじが35年間の教育現場から考える「本当に必要な対策」は、以下の3点です。

① 学校での「闇バイトリテラシー教育」の義務化

「高額報酬・即日払い・身分証コピー要求」の3パターンを、中学・高校の公民・家庭科の授業で教える。

これは今すぐできます。

法改正も予算もいりません。

教員が教材を持てば明日からできる。

なおじが現役のころに、こういう教材があれば、もっと多くの生徒に伝えられたと思います。

② 経済的困窮層の若者への支援強化

闇バイトに手を出す若者の多くは、「他に選択肢がない」と感じています。

奨学金・生活保護・フードバンク等の存在を知らない、あるいは使い方がわからない若者が多い。

「知っていれば使えた支援制度」を届ける仕組みが、まだまだ不十分です。

③ 組織の資金源・指示役への重罰化

実行役だけを捕まえても、組織は動き続けます。

指示役・主導役・資金管理役への処罰を、実行役と同等以上に重くする法整備が必要です。

加えて、海外逃亡を容易にしている「犯罪人引き渡し条約の空白」を埋める外交努力も急がれます。

👉関連記事:上三川強盗殺人事件まとめ|主犯・益田和彦がICPO国際手配された全容

高市政権への率直な評価

なおじの結論を、はっきり言います。

「方向性は正しい、しかし不十分」

取り締まり強化・ICPO連携・組織犯罪対策の法整備という方向は正しい。

ただ、「若者が引き込まれない社会をつくる」という視点が、現政権の政策にはまだ薄い。

処罰強化は「症状への対処」であり、「病気の根治」ではありません。

「引き込まれない社会」と「責任をとる教育」は両輪

若者が闇バイトに引き込まれない社会をつくること。

これは、貧困対策・孤立対策・情報リテラシー教育の充実という話だけではありません。

もうひとつ、欠かせない視点があります。

「自分のしたことに責任をとる」という教育を、どうどうと指導できる学校体制の整備です。

責任をとることを教えられない学校、指導できない教師、それを許容してしまう制度。

この三重構造が、「自分の行動の結果を引き受ける力」を育てることを難しくしています。

元校長として言えば、子どもたちに「責任をとること」を教えることは、厳しく叱ることではありません。

「あなたがしたことには、これだけの重さがある」と向き合わせ、そこから立ち上がる力を一緒に育てることです。

それができる学校・教師・制度を整備することが、治安対策と教育政策をつなぐ鍵です。

政治に求めること

政治に根治を求めるのは酷かもしれない、という声もあります。

でも、子どもたちの未来を守る教育政策と治安政策を同時に語れる政治家が、もっと増えてほしいと、元教師として心から思います。

「引き込まれない若者を育てること」と「引き込んだ側に重い責任をとらせること」。

この両輪を同時に回せる政策こそが、闇バイト犯罪の根を断つ本物の対策です。

政治は、次の選挙のためではなく、次の世代のためにあるべきです。

👉関連記事:少年犯罪と教育の現場──なおじが見た30年間の変化(近日公開予定)

よくある質問(Q&A)

一定の抑止効果は期待できますが、根本的な解決にはなりません。組織側は処罰が重くなれば実行役の選定基準を変えるだけで、組織そのものは生き残ります。少年法の厳罰化よりも、「組織の指示役・主導役への重罰化」と「若者が引き込まれない環境づくり」の両輪が重要です。少年の更生機会を奪わずに、組織の中核を壊すことに政策の重点を置くべきと考えます。
警察庁はSNS事業者に対して犯罪利用アカウントの情報開示・削除要請を強化しています。また、秘匿通信アプリを使った指示系統の解析にも取り組んでいます。ただし、秘匿アプリは技術的に通信内容の把握が難しく、完全な監視は困難な状況が続いています。プラットフォーム側の自主的な対応と国際的な法執行連携の強化が今後の課題です。
犯罪人引き渡し条約がない国(日本は米国・韓国とのみ締結)への逃亡犯については、ICPOの国際手配は出せますが、条約がなければ相手国が引き渡しに応じる法的義務はありません。外交的要請で対応することになりますが、相手国の政治的判断に左右されます。上三川事件の益田容疑者が逃亡したとみられる東南アジア諸国のほとんどは、日本と引き渡し条約を結んでいません。

※この記事は2026年6月9日時点の情報をもとに執筆しています。政策情報は随時更新が行われるため、最新情報は政府・警察庁の公式発表をご確認ください。

さらに詳しく知りたい方へ

👉関連記事:上三川強盗殺人事件まとめ|主犯・益田和彦がICPO国際手配された全容

筆者紹介|なおじ

なおじは元社会科教師として教育現場に35年間携わり、指導主事を5年、校長を11年務めました。退職後もボランティアで子どもたちに学習を教えています。

社会科教師として選挙啓発活動にも長く携わってきました。政治・社会問題の記事では、現場で子どもたちと向き合った視点から「政治を・社会を難しいで終わらせない記事」を心がけています。

現在は8つのブログでドラマ芸能政治歴史スポーツ学び書評を書いています。

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