国民投票法改正案が、2026年6月11日に衆議院の憲法審査会で審議入りしました。
「国民投票って、そもそも何?」
「改正されたら、何が変わるの?」
こんな疑問をお持ちの方は、決して少なくないと思います。

こんにちは、なおじです。
社会科の教師として長年選挙啓発活動にも携わってきたので、「政治を難しいで終わらせない記事」を書くことにこだわっています。
読み終えるころには、今回の改正案の中身・各党の立場・来週以降の採決見通しが、すっきり整理されているはずです。
この記事でわかること
- 国民投票法改正案の具体的な変更ポイント4つ
- 自民・維新・国民・参政・中道改革連合、各党の立場
- 「来週採決」とはどういうことか
- 国民投票の仕組みの基本
- 憲法改正まで、あと何ステップ残っているか
まず結論から答えます
Q1. 国民投票法改正案で何が変わるの?
今回の改正案は「投票環境の整備」が主目的です。投票立会人の居住地要件の緩和・離島での開票所設置ルールの整備など、現行の公職選挙法とのズレを解消する内容になっています。
Q2. なぜ今この改正が必要なの?
2021年に国民投票法が改正された際、「3年以内に追加整備する」という附帯決議がなされていました。その期限を受けて、2026年通常国会で4党が共同提出に踏み切ったのが背景です。
Q3. 各党の賛否は?中道改革連合はどっち?
自民・維新・国民民主・参政の4党が提出側です。中道改革連合は「放送CM・ネット広告の規制が先決」と主張しており、賛否は現時点で慎重な立場です。共産・れいわ・社民は反対を表明しています。
👉関連記事:国民投票法の仕組みと手続きの流れをわかりやすく解説 ①
国民投票法とは何か、まず基本から

国民投票法(正式名称:日本国憲法の改正手続に関する法律)は、憲法を改正するための「手順を定めた法律」です。
憲法第96条は、改正の条件を「各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会発議」と「国民投票での過半数の賛成」に定めています。
国民投票法は、この「国民投票をどうやって実施するか」の具体的なルールを定めています。
2007年に制定、2021年に一度改正
国民投票法は2007年に制定されました。
その後、公職選挙法での選挙制度改善を受けて「国民投票でも同じ仕組みを使えるようにすべき」という声が高まり、2021年に共通投票所の設置・洋上投票の拡大などを盛り込んだ改正がおこなわれています。
ただし、2021年改正の際には「3年以内に放送CM規制・ネット広告規制も含めた追加整備を検討する」という附帯決議も付けられていました。
今回はその「続き」にあたる改正
2021年の改正からおよそ5年が経過しました。
今回の改正案は、遅れている附帯決議をふまえた投票環境整備の実施がメインテーマです。
ただし、CM規制やネット広告規制の部分は今回の改正案にも含まれていません。
中道改革連合がこの点に異議を唱えている理由が、ここにあります。
改正案の主な変更ポイント4つ
今回の国民投票法改正案には、投票環境を整備する実務的な変更が4点盛り込まれています。
提出したのは自民党・日本維新の会・国民民主党・参政党の4党です。
6月5日に衆院に提出され、6月11日の憲法審査会で審議入りしました。
変更点①:投票立会人の居住地要件を緩和
現行制度では、国民投票の投票立会人になるためには一定の居住地要件があります。
今回の改正案では、その要件を公職選挙法の基準に合わせて緩和する内容が盛り込まれています。
立会人が集まりにくい地域での投票管理の実態に対応した変更です。
変更点②:離島での開票所設置を規定
悪天候などで離島から投票箱を本土に運べない場合、現地に開票所を設けるケースの規定を整備します。
離島住民の「一票」が天候に左右されないよう、現実的なルール整備といえます。
なおじが地理の授業でよく話していたのは「選挙権は机の上の話じゃなく、生活の話だ」ということで、こういった実務的な改正は地味ながら大切だと感じます。
変更点③・④:公職選挙法との整合性確保
その他、現行の公職選挙法の規定とのズレを解消するための整合性修正が含まれています。
法律どうしの「歯車が噛み合っていない」状態を解消する作業です。
学校で言うと「校則は変わったのに内規が古いまま」みたいな話で、放置するとトラブルの温床になります。
各党の立場と中道改革連合の主張
今回の改正案は4党が提出側だが、国会全体の賛否には温度差があります。
| 政党・会派 | 立場 | 主な主張 |
|---|---|---|
| 自民党 | 提出・賛成 | 公選法との整合性確保・速やかな審議を要求 |
| 日本維新の会 | 提出・賛成 | 憲法改正議論の前進に積極的 |
| 国民民主党 | 提出・賛成 | 緊急事態条項など改憲論議に前向き |
| 参政党 | 提出・賛成 | 憲法改正推進の立場 |
| 中道改革連合 | 慎重・条件付き | 放送CM・ネット広告の規制が先決と主張 |
| 日本共産党 | 反対 | 改憲策動を許さないとの立場から反対 |
| れいわ新選組 | 反対 | 改憲反対の立場 |
| 社民党 | 反対 | 憲法9条擁護の立場から反対 |
中道改革連合の主張は本質を突いている
中道改革連合・階猛議員は「放送CMやネット広告の規制を先に解決すべき」と主張しています。
これは「投票環境の整備」とは別の、大きな論点です。
国民投票の際に特定の勢力が大量のCMを流せるとすれば、「情報量の不平等」が生まれます。
選挙ならば公職選挙法でCMに制限がありますが、国民投票にはその規制がありません。
社会科の観点から言うと、投票の「技術的な環境」を整えるだけでなく「情報環境の公平性」も同時に整えなければ、真の意味での民主主義的な国民投票とは呼べません。
この点は授業でも必ず問いかけていた部分で、生徒たちも「CMが多い方が有利なの?」と真剣に考えていました。
👉関連記事:国民投票CM規制ゼロ|海外5か国比較と5年間の経緯 ③
来週採決の見通し、その意味
6月18日の週に採決がおこなわれる見通しで、与党側は成立を目指して調整を進めています。
ただし、この採決見通しは「与野党間の調整」の段階であり、最終的な確定情報ではありません。
中道改革連合が修正要求を続けた場合や、審議が延びた場合は変わる可能性があります。
👉関連記事:[憲法改正をめぐる各党の公約(2026衆院選)について(記事執筆後リンク予定)]
衆院を通過しても、参院がある
仮に衆院の憲法審査会・本会議で可決されても、参院での審議・採決が残っています。
国民投票法の改正は通常の法律改正の手続きを踏むため、衆参両院での可決が必要です。
憲法を改正するための「国会発議(総議員の3分の2以上)」とは別プロセスであることも押さえておきたいポイント。
よく混同されますが、今回の「国民投票法改正」と「憲法改正の発議」は別物です。
国民投票法改正から憲法改正まで、何ステップあるか
国民投票法が改正されても、それは「環境整備」であって、憲法改正そのものが始まったわけではありません。
憲法改正が実現するまでには、以下のステップが必要です。
- 国民投票法の整備(←今ここ)
- 憲法審査会での改憲原案の起草・合意
- 衆参両院それぞれで「総議員の3分の2以上」の賛成による国会発議
- 国民投票(過半数の賛成で改正成立)
現時点では、ステップ1が進んでいる段階です。
ステップ3の「3分の2以上」については、2026年2月の衆院選後の議席配分から「3分の2超」に達しているかどうかが焦点になっており、中道改革連合の動向が鍵を握っています。
元教師の視点から見た「国民投票」の重さ
教壇での選挙啓発活動を通じて感じてきたことがあります。
投票という行為は、「誰に入れるか」を考えるだけでなく、「何のために投票するか」を理解してから参加することに意味があります。
憲法改正の国民投票は、普段の選挙よりさらに一段、「中身を理解した上での意思表示」が求められます。
だからこそ、国民投票法の「投票環境の整備」だけでなく、「情報環境の整備(CM規制・ネット広告規制)」も同時に論じてほしいのです。
CM規制をめぐる議論は今回の改正案から外れましたが、ここで終わりにしてはいけないと感じています。
👉関連記事:[2026年衆院選の争点と各党の憲法改正スタンス(記事執筆後リンク予定)]
過去の国民投票法改正との比較
2021年改正と今回の改正は、性格が異なります。
| 比較項目 | 2021年改正 | 2026年改正案 |
|---|---|---|
| 主な内容 | 共通投票所・洋上投票拡大・繰延投票など7項目 | 投票立会人要件・離島開票所・公選法整合性 |
| 提出主体 | 与野党合意の修正案 | 自民・維新・国民・参政4党 |
| CM規制 | 附帯決議で「3年以内に検討」 | 今回も先送り |
| 採決状況 | 可決・成立 | 審議入り(6月11日現在) |
2021年改正の際の「3年以内に検討する」という附帯決議が、結局2026年になっても「検討のまま」で実現していない現状が、中道改革連合の主張の根拠になっています。
👉関連記事:国民投票法の仕組みと手続きの流れをわかりやすく解説 ①
よくある質問(Q&A)
憲法改正案が国会(衆参両院それぞれ総議員の3分の2以上)で発議された後、国民全体が賛否を投票する手続きです。有権者の過半数が賛成すれば、憲法が改正されます。普通の選挙と違い「誰かを選ぶ」のではなく「賛成か反対か」を直接問う制度です。投票年齢は18歳以上です。
いいえ、今回の採決は「国民投票法の改正」です。これはあくまで憲法改正のための「制度整備」にすぎません。憲法改正には別途、国会で総議員の3分の2以上の賛成による「発議」が必要で、そのハードルはまだ越えていません。「環境の整備」と「本番」は別物です。
中道改革連合など慎重派は、CM規制やネット広告規制を盛り込まなければ「公正な国民投票」にならないと主張しています。一方、4党提出側は「今回は投票環境の実務的整備を優先」という立場です。意見の折り合いがつかず、CM規制は今回も見送りとなりました。この問題は附帯決議から5年越しの積み残し課題になっています。
2026年衆院選前に立憲民主党と公明党の衆院側が合流して結成した政党・会派です。今国会では憲法審査会で「改憲論議に慎重」な立場を示しながら、実務的な国民投票法整備には条件付きで関わっており、改憲勢力の3分の2超を左右するキープレイヤーとして注目されています。
国民投票法の改正は「手続きのルール整備」であり、通常の法律改正と同じ手続き(衆参それぞれ過半数の賛成)で成立します。一方、憲法改正は「国民投票法で定められたルールに従い、国民が直接賛否を問われる手続き」です。両者は全くの別プロセスであり、国民投票法が整備されても、憲法改正が自動的に始まるわけではありません。

筆者紹介|なおじ
なおじは元社会科教師として教育現場に35年間携わり、指導主事を5年、校長を11年務めました。
退職後もボランティアで子どもたちに学習を教えています。
社会科教師として選挙啓発活動にも長く携わってきました。
主権者教育の一環として「選挙とは何か・投票とは何か」を生徒と一緒に考えてきた経験が、政治記事の根っこにあります。
政治を「難しい」で終わらせない記事を心がけています。